車窓
八布
わずかばかりの乗客を乗せた
昼下がりの鈍行列車の
窓を少しだけ開いてみると
六月の薫風がそっと忍びこんできて
僕の睫毛を醒ますのだった
この車両は最後尾なので
終着駅に到着する
その最後の最後まで
この快い風と列車のリズムを
楽しむことができる
少しだけいい気分だ
開いた窓から
心が出ていくような
遮られていたものが
溢れ出ていくような
境界がほどけて
外と内とが混じり合う
昼下がりの車両に忍び込んできたものは
風だけでなく
夏に近づく気配そのもの
自由詩
車窓
Copyright
八布
2014-06-15 21:21:12
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