落ち着く
殿岡秀秋

なんとなくせかされる気持を
落ち着かせようと
傘を開くように
立ち上がる

肩から力を抜き
仙骨を立て
腹から息を出し
前を視ると
スクリーンが
ワイドになる

混雑する電車をおりて
プラットフォームの
雑踏に
眼の前の数人の足だけでなく
並んで歩く人たち
向かってくる人たち
黄色い服
青い服
茶色い髪
黒い髪
隣のフォームに
入ってくる電車
駅前の高いビルの窓まで
視界にはいってくる

向こうから見るぼくも
前と変わっているかもしれない

世界との距離がとれると
コトバの視界もひろがる

高い窓を反射する光が
記憶のプラットフォームを照らす
そこに子どものぼくが現れて
長袖のシャツの両腕を
真横に揚げると
白い翼が拡がる
上下にゆっくり振りながら
線路の空に舞い上がる



自由詩 落ち着く Copyright 殿岡秀秋 2014-06-15 10:53:05
notebook Home 戻る