恋愛とは少し深いポケットである
りゅうのあくび

ほとんどの恋とは、
心にだけ映っていて視ることはできない
約束された秘密の世界のことであったなら、
それから、あらゆる愛とは、
はっきりと形がある存在であって、
与えることも与えられることも、
どちらともがあるのならば。

きっと恋とは、
少し深いポケットの
特殊なサイズのことだったとして。
そうしたら愛とは、
かなり広めの丈夫な布地のことであって、
ほとんどのことを包むことができるだろう。
それは、束縛のことではなく。
ふたりでかわした大切な約束だとか
大切な人の命だとか運命にかかわること
を包むことができる。

そして、恋でできた
少し深いのポケットの寸法で
愛でできた丈夫な布地を縫い合わせると
恋愛という名前の
少し深いポケットができあがる。
ちょうどそれは、
ふたり歩きをしながら、
握りあった手のひらだって入るぐらいの
大きさで。

ささやかなお互いの
夢だっていれることができて、
ぎゅうぎゅうにすることができるし。
仕事だって何だって
相手のあることではあるのだけれども、
予定を作ればいいのだろう。
ふたりで住むことができる
部屋の鍵だってはいるし。
財布にだっていつも生活費を閉じ込めてから、
ポケットにいれる。

人は歩きながらで、
誰しも寂寞の想いを
暖めることができて
きっと幸せは、
暖かく少し深い
ポケットの中にそっといれて、
人生を歩むことができるのだろう。
大切な人への
想いだって運ぶことができる。

特殊なサイズの
少し深いポケットからは、
幸せをいつも取り出すことができて、
誰かに与えることもできる。
いつかのふたりでした
約束を守るために、
ポケットの中の携帯電話で
仕事帰りにでも
連絡を取り合うことができる。
ふたりだけの大切な世界のために。

でも、快楽を交わす言葉だけは、
うっかりポケットにはいれるのを、
忘れてしまうかもしれない。
それを思い出した時には、
ふたりは抱き合うことをしながら、
静かに軽く口づけをするだろう。


自由詩 恋愛とは少し深いポケットである Copyright りゅうのあくび 2014-06-13 14:18:24
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