雨降りと小さな黒猫
りゅうのあくび

雨降りから
こっそり逃れるために
少しずつ歩く
小さな黒猫には
首輪もないので
名前もないだろう

彩りある
小さな傘がたくさん
水たまりの
近くにあって
バス停で
トロリーバスを
待っている
家路を
向かう子供たちの
傘のしたに
小さい黒猫が
何匹も
入って来る

子供たちは
遊び相手が
見つかって
家路をあきらめ
トロリーバスは
ゆっくりと
出発する

雨はとても細く
しっとりとしている
近くの図書館の書庫では
今朝の新聞が
伝える天気予報と
古い小説とのあいだにも
まるで湿気と
切なさに
たわむれるように
雨という
黒くて小さいインクの印字が
色あせている
小さい黒猫たちの
足跡のように

子供たちは
翼のない天使みたいに
傘を差して
小さな
黒い猫を連れて
歩いていく


自由詩 雨降りと小さな黒猫 Copyright りゅうのあくび 2014-06-13 00:03:57
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