ノクチュルヌ
藤原絵理子


まるくなった猫の眼 チャイナドレスの黒い髪
いつものことのように 振舞う
カフェは満員だったけど 手を上げると
席を作ってくれる シェルブールから来たギャルソン


もう 彼の故郷に行ってしまいたいような気分
赤のワインは ますます赤く 凄絶に
街行く傘は 笑いさざめいたり 急いだり
あたしの隣に あなたがいないだけ


誰かがピアノを弾いている
しなやかな指が 滑るように
夜の雨に 街路樹が濡れる 街灯が濡れる 


追憶の向こうに 朝のゆで卵を置いてみる
シェルブールの彼が 不思議そうに見下ろす
あなたの傘に入りたい 巴里の乾いた雨


自由詩 ノクチュルヌ Copyright 藤原絵理子 2014-06-12 21:17:01
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