アオサギ独語
イナエ

今年の冬は
何時もの細長い島へ避寒に行くのよそうかな
島で 子作りするでもないし
このあたりでも河面も凍らなくなったし 
餌の小魚も採りやすいし

あの島の平地にはニンゲンの巣が広がって
キツネやイタチも少なくなり
寝込みを襲われる心配は無いのだけれど
夜になっても光る目玉が走っていて
ねぐらの木にぶつかったこともあったし

鉄砲を持ったニンゲンはいなくなったけれど
美味なフナやモロコ 泥鰌も少なくなって
外国から来た平べったい魚が多くて
肉も薄く味も悪く そのうえ骨が硬くて
砂袋にとがった小石をつめねばならないし

昔 冬の間も水を張った田は
今は枯れて北風に晒され
土を掘り返してみても
毒がまかれたのか
ザリガニもタニシも見つからないし

横を流れる冷たい河の水中を
我慢して餌探ししていれば
カラスがぎゃあぎゃあ邪魔するし
川鵜が水に潜って少ない餌を横取りするし

田鶴と呼ばれた昔の話を思い出し
頭を上げて鶴を気取ってすましてみても
赤いベレー帽など持たない上に
五位のような位を持たないサギはしょせん詐欺
ニンゲンはだまされることなど無く
見向きもしないでさっさとおりすぎる

あののんびりした島も
背を丸めて急ぐ人が多くなって
ずいぶん住みづらくなったからなあ


自由詩 アオサギ独語 Copyright イナエ 2014-06-12 16:36:42
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