僕らが幽霊を見た夜
ねなぎ

僕らが幽霊を見た夜は
夜釣りの帰りに
君は
黙って自転車を漕いで
僕も
黙って
並走していた

僕らが幽霊を見た夜には
誰にも話さずに
お互いに黙ったまま
次の日に
確認し合って

僕らが幽霊を見てた夜の事
田んぼの真中の
電話ボックスの中に
誰かが居た気がして
そして
誰も居なくなった

僕らが幽霊を見た夜が
明けた時に
どちらとも無く
気が付くように喋って
確認した後で
誰にも言わなかった

僕らが幽霊を見た夜から
僕は君と喋る事は少なくなり
やがて
そんな事さえも
忘れてしまって
夜釣りにも行かなくなった

君が幽霊になった夜に
僕は黙って
やっぱり自転車を漕いで居て
誰にも何も言わなかった

君は幽霊になったろうか
田んぼの中の
あの電話ボックスに
君は居ただろうか

僕らが幽霊を見た次の朝の
君の絶対を
守っているけど
僕には君が
見えやしない


自由詩 僕らが幽霊を見た夜 Copyright ねなぎ 2014-06-10 00:35:35
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