◎ほころび
由木名緒美

闇が黒鳥のように 優しさを覆っていく
逃げる魂は英知の木陰に救いを求め
聖母の衣袂に口づけする

粉々に割れた一枚氷が 涙のもやを隠し
理性の囁きは事切れた罪悪を慰安する
飛ばされるままに感情を請け負い
満たされる皿は腐敗していく
動揺の岸辺を子守唄は流れ
静思の老衰を速める

報われるのは 必然の花嫁
繋がれた確率の尾を手繰り寄せ
祝福の花束に変える
一匙の涙を掬って
ただ憫笑だけが足りない


自由詩 ◎ほころび Copyright 由木名緒美 2014-06-09 20:54:44
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