とんび
……とある蛙

山底から吹く風を受けて
君と二人歩いた城山は
頂上に天守
天守から望む山の中腹は
鳶が風をはらみ
そのま中空に浮かんでいる

遙かに見渡す浦賀水道
あの頼朝が命からがら安房へ渡り
さらに古のヤマトオグナが
海神に襲われた浦賀水道

今日はうららかに澄み渡る空で
ゆっくりと夥しい数の貨物船
タンカーが行き交う
ここは房総の突端なのだ

やたら犬を連れたものが多く
本当は富山なのになどと思い
八犬伝を売りにする
再建天守を恨めしく思う

しかし、君は満足げだった
天守から望む三浦半島は
手が届く 
ほんの指の先だ
空は青空 澄み渡る

こんな高いところに
また、君と行くことがあるのだろうか
僕は手賀沼の空の上から
指先の震える君を見る

風をはらんで君を見る
風と海の歌を口ずさみながら。
ぴーひゃらぴーひゃら
場違いな声


自由詩 とんび Copyright ……とある蛙 2014-06-09 12:35:52
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