ひとつ 満ちる Ⅱ
木立 悟





強く握るまぶたから
銀の行方が放たれる
透る 透る
遅い光


縦の雷雲
縦の午後
器を追われた
鉱の音


夜を向いて咲く花が
幾つも冬の秘名をこぼし
径をひたし
空を招く


偽闇の多さに涙は干き
陽を知らぬ壁と川を見つめる
どこにも触れぬ淵の重さ
内と外のわずかな痛み


羽の生えた夜の繭を抱き
昇る震えを呑みつづけている
金と緑の川と飛沫
常に近くを流れる光


片目だけがまぶしくはばたき
真昼へ真昼へ戻ろうとする
なかば持ち上げられながら
それでも脚は径をたどる


曇の近い
水が空の午後
指は鳥を読み
羽に満ちる


燐の鱗
濁の雨
あらゆる旗の紋章を消し
あらゆる色にひるがえる























自由詩 ひとつ 満ちる Ⅱ Copyright 木立 悟 2014-06-09 09:19:55
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