核心
ヒヤシンス
鮮やかな夕映えの中に立つと もう
私は死を思い出すことが出来ない。
いま目の前で繰り広げられている現象が強すぎて
私の中に在る記憶という記憶は閉ざされる。
沈黙の中で人が己の内面と向き合うには
それはもはや記憶の扉を開けなければ成し得ない。
しかしそれが比較であっては物足りない。
認識を超えた永遠の中に見出すことが出来たなら。
一つの果実は死を超越し
巡る季節の中で永遠の時を漂い
彷徨いながら熟してゆくだろう。
それならばたとえ夕映えの中に立ち尽くし
あらゆる現象が沈黙したとあっても
私は私の死を思い出すことが出来るはずなのだ。