群青色の乙女
りゅうのあくび

深い霧のように
飛沫をあげる
たくさんの雨粒は
花柄の傘が雨をはじく
音が聴こえるあいだに
仕事帰り乙女の
世界を群青色へと
静かに揺らぎながら
変える

遅めの夕食を終えて
すべてを紺碧の空がうつる
海色に染める
とても大きなひと粒の
涙がシーツへこぼれる
哀しいだけの青はどこまでも深く
夜に群青色をした惑星では
乙女は人魚へと
衣装を着替え始めるのでした
金曜日の雨の真夜中は
ゆらゆらと深く永い

真珠の首輪をつけた
妖精みたいに
横たわる人魚は
冷えた六月の雨に
屋根がぬれて
部屋の空気も
ひんやりとしているので
貝のように
毛布にくるまっていて

きっと
夢の中では
あらゆることが
海水に似た涙で
もはや
満たされていて

海中で紫陽花の咲く
遠い珊瑚礁の
昨日には海岸線だった
浜辺では
孤独な熱帯魚と
一緒にたわむれながら
泳いでいる
喫水線をこえて
教会のある
丘だった場所に
ぽつんと
打ち上げられそうな
まだ幼いクジラを見つけて
海に戻そうと
必死になっている
かもしれない
もしくは
すでに水没した
メガロポリスで
恋心を探す
旅の支度をする最中
だったとしても
不思議ではない


自由詩 群青色の乙女 Copyright りゅうのあくび 2014-06-06 23:12:41縦
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