ただしい醗酵のてびき
梅昆布茶
醗酵することは発行されたものをもたないこと
あるいは発光する冷たい微熱をかかえた昆虫の夜を生きること
あるいは薄幸な女の身の上話にあいづちをうつ場末の安酒場の空気
欲望は醗酵し発熱し自分の足を見失って歌い始める
希望は里程を忘れて感情の流れに身を任せたりもする
ただしさなんて誰も持っていないもちものだ
俺にはいちばんふさわしくないアクセサリー
でもトイレットペーパーよりは役に立つただしさというやつを
ぼくは欲しいと思っているわけだ
醗酵することはきちんと整理できるようになること
いいんだ風に曝されてあばら骨さえ見えたって
発光しなくても生きてはゆける
無理に醗酵するひつようもないし
あなたはたぶんそのままでいいと思うんだ
あなたはたぶん俺
俺は粉々の骨片で
それでもあなたの道徳を教わろうとする
ぼくたちのからだのなかの微生物
名前の無い無限数のただしさがかってに発光しはじめる
無限数の微細なエゴが醗酵した霧のように好きと嫌いが
いつのまにか善悪にすり替わっていたりして
わたしたちがなにものであるかを証明する
生のパスワードを発効させるのかもしれない