木屋 亞万

未だこぼれ出ぬ涙のために
1tの鉄塊を失って
また人らしく踊れるかもな

大腸の横穴の奥で溶けない氷
夏を越えていく中で
浮き出て腐る
いつぞやの恋は
未熟な枝付枯葉

機械が核の鉄服に
洒脱な兎は義足も車輪
比重の軽い金属ばかり
小心を胸に世界に挑め
見ずに放れる一握の塩

陽光は上半身を源に
質素に膨らむ内部から
赤い光を射出する
煤に塗れたボイラーだけが
壊疽を目指して燃えている

離散していく感情は
どれだけ暗く濁るだろう
質量はあてどなく歪み
甘藍の芯は腐りゆく
季節に従う倦怠は
明るいところで読めない手紙

沈黙と警笛の狭間で秒針は
力なく反復し四十五秒を越えられない
価値に勝てない泡の柱に
足場を失う夢見の過客
増上慢で管見を抜け出せぬまま
目隠しで燥いで歌う小さな世界


自由詩Copyright 木屋 亞万 2014-06-02 00:26:40
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