「君」を捨てたまえ
yamadahifumi





無数の人間が小説を書き

無数の人間が詩を書いている

誰もが自分を知って欲しくて

誰もが自分自身を叫んでいる

でも、その自分というのは何だろうか

君はテレビの中の人間を見て

羨ましいと思った事はあるだろうか?

彼らがあれだけ人気があるのは

「自分」を失ったからなのだよ

誰よりも徹底的に自分を捨て去った者が

自己なきこの世界では誰よりも喝采を受ける

タモリを見たまえ 彼の全てを受け流すその態勢を

彼は個性などという奇妙なものをとっくの昔に捨ててしまったんだ

だから、彼の胸に流れる喜びも希望も悲しみも全ては

どこか別の惑星を流れる誰か別の人の感情のように

感じられているかもしれない

だが、君はどうだ

君は自分を捨て去る決心もつかず

世界に見捨てられても自分にしがみつく、というその決心もついてはいない

君は中途半端だね

僕はそう思うよ

ところで、君の小指についた君のピンクのマニキュア

僕はとても素敵だと思うね

君自身よりもずっとはるかに

それは素敵だと思うね

僕はそう思うよ

「君」なんてくだらないから

明日の燃えるゴミの日にでも

さっさと捨ててきてしまえ

君が昨日食べ残した

バターロールの残骸と一緒に




自由詩 「君」を捨てたまえ Copyright yamadahifumi 2014-05-31 07:24:59
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