◎手なずける
由木名緒美

手なずける

胸を押し開き、雪崩となって溢れ出す
小鳥 薔薇の棘 北極星 壊れたピアニカ
みんな開口一番に聞いてくる
「この世の生血を味わってるか」

破壊したもの
手の平で包んで、かろうじて輪郭を保ってるもの
相殺にかまけて放棄した
崩落の一瞬は、虹彩を縁どる太陽よりも鋭利に
脆い視線を捉えた

足を踏み入れなければ
破けることもない踵は
踊るように道と交尾していく
夕日が街を染めゆくまでに片づけてしまわねば
夢から溢れれば要らぬ外装となってしまう
幼気な皮膚を剥いで、脈打つ心臓に触れる

まだ捨てないでいて下さい
生まれたばかりの雀の雛が
卵の殻を愛しんで誤飲してしまうから
明日の朝一番には廃棄物処理場に持っていくよ
袋越しに伝わる生温かさが
増殖した夢の含意を囁いてくる
「生血に触れるかい?雷鳴のように喉を鳴らして飲み干してごらんよ」


自由詩 ◎手なずける Copyright 由木名緒美 2014-05-31 02:36:03
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