あじさい
藤原絵理子
青空を集めている
あじさいのつぼみ
青いガラス瓶
明るい陽に揺れる
痩せ細った手で
筆の先から
搾り出したような 一枚の絵
淡い青のあじさい
木立に濾された光は
揺れる葉の上に転がって
小さな音をたてる
サティのピアノが聞こえる
白い扉のホスピスにいた
荘厳ミサ曲より
ジムノペディが似合っていた
彼女の淋しい笑顔
やがて灰色になる この庭に
青空を吸い込んだ
淡い青のあじさいが咲く
白い壁に掛けた絵のように
彼女の不在は
所在無げな白い椅子の上
蟻がせっせと
夏の準備をしている