見えない魚
アンドリュウ

男は水の中に立って
見えない魚を待っている

皆は目に見える魚を追って
遠くの海へ行ってしまった

男が待っているのは
自分にしか見えない魚

その魚の存在を人は信じない
手っ取り早く金になるのは誰の目にも見える魚

それでも男は幻の網をうち続ける
網はその時々の心の組成で出来ていて
かかる獲物も違うしそれらは彼以外には見えない

男はチューニングのダイヤルを僅かに動かすように
心の境地と自らの立ち位置を変える

何年もの間男は見えない網をうち続ける
傍目にはそれは馬鹿げた徒労に思える

皆は見える魚を追うことに忙しい
それは確かな形で富に変わる

男は黙々と見えない網をうち続ける
彼にしか見えない魚を追って彼はますます澄んでゆく

一度魚を手に入れたなら
忽ち彼は光を帯びて水の中を泳ぎ始める

彼は透明な光を帯びて
その姿が見える者を求めて遥かなる海洋を流離う

そうやって不思議な光は受け継がれてゆく
だからあなたも網をうち続けるがいい
見えない魚のかかる時まで
幾度でも…


自由詩  見えない魚 Copyright アンドリュウ 2014-05-28 03:43:28
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