星空に降りていく など五篇
クナリ

<誘い>
どうか、誘ってください
真に受けたりはしないから。





<未練>
あなたのためなら
人形になってもよかった
人形くらいしか
あなたのような人のそばにはいられない

でもあなたは
人形のような人間が大嫌い。





<星空に降りていく>

十二月の曇天の夜
人気を通り過ぎた高速道路
月も星も隠れた空の道に
輝くものは 自分だけ

誰もいない
何も見えない
空中回廊は
闇に続く

もうすぐ 下り道
重力の 手引きが始まる
見える先には 夜の街
まばらな灯りは ぽつりぽつり
まるで 星空のような 夜の街

あの星空に向かって降りていく
天地も理屈も 手を放す
あの星空に向かって降りていく
ずっと空を見上げて生きてきた

あの星空に向かって降りていく
仮初めでつかの間の幻想へ
あの星空に向かって降りていく
今だけはただ確かに一人の私。





<わき目も振らず>

わき目も振らず
ただ一つのものだけを
全部犠牲にして追い続けたら
全ての荷物を捨て去って
自分に出来る一番の速さで追い続けたら

犠牲にするものが増えるたびに
追いかけているただ一つのものが
どんどん速さを増して遠ざかって行く
自分に出せる一番の速さでも
決して追いつけないほどに

そうして
それまではあんなにのろまだったはずの
生きている限り追いつかれないとも思えたはずの
あきらめがすさまじい速さでやってくる

何一つ捨てなければよかったと
嗚咽しながら隣を見たら
背負いきれないものものを載せて
泣いてつぶれた 背中が一つ。





<どこへでも>

どこへ連れて行ってくれてもいいよ

ここがどこなのか教えてくれたら。



自由詩 星空に降りていく など五篇 Copyright クナリ 2014-05-22 20:31:34
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