Dilemma.

♯1
まるでそれは壊れたラジオ
垂れ流す意味のない言語
本音を言えば 誰かにスイッチを切って欲しい
ああ でも小突かれすぎてバカになったそれを粗大ゴミに出すのは来週まで待ってほしい...


わかってる それは時代遅れ
耳傾けるだけ損なんだろう?
陰気な言葉を流し続ける古臭いラジオなんて
捨てられないにしても
押し入れの奥の奥にしまっとくべきなんだよな
いつまでも部屋が散らかって見えるのはサビついたラジオが部屋の真ん中を占拠してるからだってわかってるのに
無意味だと知りつつ
古びたラジオから流れるノイズだらけの放送をペンを握って書き留めているのは何故なんだ?
今夜もハンマーを握って そいつの前に立ち尽くす
憎らしいのに壊せないのは何故なんろう?


♯2
まるでそれは
海に囲まれた脱出不可能な監獄
言葉の格子から見た現実は
夜に浮かぶ月のように
自分の手に届かないもの
囚人のすすり泣きが聴くに絶えないなら いっそこの頭に銃弾でも撃ち込んでダラダラと続く人生にピリオドを打ってくれ
ああ でもやっぱり待ってくれ
死ぬ前にもう一言
俺はまだ何一つ言い終えていないんだ

昨日辞めたはずが また白い紙の前
今夜も本音を照らされ 生きている限り永遠に続く事情聴取
そろそろうんざりしてきたよ
他の奴らは何食わぬ顔で生きてるのに 何故俺は書かねば生きられないのだろう?
ヘルマンヘッセは今も車輪の下?
俺達押し潰してしまうものとは一体なんだろう
薄暗くてジメジメした岩の下でうずくまっているダンゴムシ
残酷な話じゃないか
どんなに嫌ってみても
彼らはそこにしか住むことが許されないのだから

♯3
まるでそれは売春婦に書く恋文
ポケットの中に全身全霊を込めた女への手紙
彼女はいたずらっぽく舌を出して笑ったあと
それをビリビリと破り捨てて
さっさと仕事を始めてしまう
全て抜き去られた後 感じる焦燥感
何も生み出さないsexにはもう本当にウンザリなんだ
だから無意味だと知りつつ今夜もおまえに気持ちを綴る
なぁ
本当に心底おまえに惚れているんだ

「もう本当に辞めにしよう」
希望と絶望の狭間でのいつもの ジレンマ
インクと時間を散々無駄使いした後
全てが嫌になって外に出る
飲みに飲んで
脳細胞と金を散々無駄使いした後
家に帰り何気なく手に取るペン
スラスラと紙の上を走っていたペンが次のセンテンスを前に立ち止まる
ペンを回し 首をひねる
今夜も行間にてジレンマ...





自由詩 Dilemma. Copyright  2014-05-22 18:30:45
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