子守唄
月形半分子


月がのぼります 屋根のうえ、

猫がとおります 光る目をして 橋の下

音楽がなります 淋しい顔うつして窓の
ひとつ

燈された電球の影の影の影たどる 

時計がページもめくれないのに、読書中

秒針がひとりぼっち ぼっち ぼっち

と数かぞえ 夜刻み

風がふきます 夜着のなか 


帰る場所もないのに

帰りたいのです

と、珈琲がミルクをこぼして泣きました

綺麗に整頓された角砂糖をひとつ、ふたつ

おはいんなさいと くるくるまわる かざぐるま


わたしを眠らせて 音楽がやみます

子守人のように 風がじっと動きをとめるとき

猫の目のように ものかげへ 

月もかけていきました





自由詩 子守唄 Copyright 月形半分子 2014-05-16 18:06:47
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