半身
まーつん

 朝、目覚めると
 洗面器に張った水で
 顔を洗った

 さっぱりした気分で
 鏡を見つめてから
 ふと、視線を落とすと

 洗面器の中に
 星の海が
 広がっていた

 僕は、凍り付いた
 二日酔いの幻覚だろうか
 だが、幾度瞬きを繰り返しても
 暗い揺蕩いの向こうに、星々は浮かんでいた

 そして、水の揺らめきに映る
 自分の驚いた顔が、こちらに向かって
 不意に微笑み、踵を返すと、僕に背を向けた

 彼は、服を脱ぎ捨て
 星の海へと泳いでいった
 ゆっくりと、素足を振って
 小さな点となっていく
 裸のままの、僕自身

 寒気を覚えて、寝室に戻ると
 恋人が、ベッドの中で待っていて
 潜り込む僕の背中に、裸の腕をまわしてきた

 僕はただ、頭を抱え、
 叫び声を押し殺す


 この上もない
 淋しさに







 2014.5.14


自由詩 半身 Copyright まーつん 2014-05-14 22:54:40
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