試験
山部 佳

曇った朝
「力、出すことだけ考えや」
車を降りる息子に声をかけた
「うんうん」
曖昧に頷きながら改札に消えた

重い病気で
1年を棒に振った彼は、ある日
「フリーター」、と自嘲して泣いた
TVでは同年のサッカー選手が
活躍するニュースが流れていた

どんよりした空から
ぽつり、ぽつりと雨が落ちてきた
降っては止む、中途半端な雨
いっそ土砂降りに、と…
父親と息子という模様

お前が生まれたときのこと
「男の子ですよー」
ピンクのユニフォームを着た看護師の
明るい声と一緒に笑顔になった
私は嬉しかった
月並みだが、待っていた男の子だったのだ

目の前の現実に流されて
夢をはぐらかせて、適当に生きてきた
情けない父親が言ってやれること
「燃え尽きてくれ」
現実に流されて
くすぶり続けないでくれ


自由詩 試験 Copyright 山部 佳 2014-05-14 21:56:06
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