雉のたまご
chiharu

わたしが子どもの頃、
庭で番いの雉を飼っていた。

決して広くはない鳥小屋で
父は黙々と世話をしていた。

鋭い眼光と美しい羽。
「綺麗だろう?」と父は言った。

雉は時々、たまごを産んだ。
父はそのたまごをご飯にかけて食べていた。

わたしはなんだか気持ちが悪くて
一度も食べたことはなかった。

ある日、学校から帰ると雄の雉がいない。

逃げたのか?
そう思って父に尋ねると、

「あぁ、もう雉はいない。
さっき首を絞めて殺したのさ。」

なんで?
あんなに世話をしていたじゃないか。
たまごを産んでくれたじゃないか。
どうして殺したのか。

暫くして雉は剥製となって家に戻ってきた。

美しいものを永遠に傍に置いておきたい
父の征服欲。
吐き気がした。

雌の雉は、後を追うように死んだ。

もう、その雉の剥製は家にはない。
父が捨ててしまったらしい。





自由詩 雉のたまご Copyright chiharu 2014-05-13 14:49:35
notebook Home 戻る