赤い沈黙
ユッカ

辞書で引いた、誰も知らない昔の言葉より
たった1人の
きみの名前が世界でいちばん美しいのに
今日こそすばらしいことを発明できるような気がして
また赤い日記帳を開いてしまうから
その白い空白が目に痛くて
涙が止まらなくなる

またひとつ、運命をなかったことにして
鳴らない鈴の音を一日に何度も聞いて
振り返っては自分の弱さに目を見開いて、動けなくなるのか


リンリンリンリンリンリンリンリンリンリンリンリンリンリンリンリン

(うるせえなあ。)


緑の絵の具が空にあふれて
あたしの輪郭を奪い去ってくれそうで
木漏れ日ひとつに見とれて
足をとめてしまうのに
どしゃどしゃ雨が降っても
頑丈なこの世界は
葉っぱひとつ滲まないまま凛としているから
あたしの歪んだ輪郭ばかり目立ってしまって
ろくでもないや
胸の鈴が
りんりん鳴るのを抑えられない


リンリンリンリンリンリンリンリンリンリンリンリンリンリンリンリン

(もう起きてるよ。)

ひどいことを思いきり叫んでもらえるように言葉を選んで
優しいだけのあたしになってあなたをかわして
すべてを美しいだけの言葉に代えて
運命をなかったことにして涼しく笑っていたいのに
あたしのほしい言葉のすべてを、きみが持っている


自由詩 赤い沈黙 Copyright ユッカ 2014-05-08 19:19:08
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