不動の穴
春日線香
庭でだいこんが生えそろっている
白くみずみずしいだいこんが土に刺さっている
知っているか だいこんの葉っぱには青虫が
ものすごくよくつく ほんとうにきりがないほど
だから割り箸でそいつの青首をひょいとつまんで
植木鉢の皿などにくねくねくねとのせてやり
これをうやうやしく捧げ持ち 不動の穴へ
そこからは生臭い息がもれており
うららかな春に惨劇の予感を漂わせている
おお 虫よ覚悟するがいい
皿の中身をぶちまけるように穴に放つと
そこから先は夜 夜の悲鳴でしかないのだ
わたしたち付近のものはもうそれで安心して
急いで家に帰って布団をかぶる
頭まで隠した暗闇で くくくと奥歯で笑う
悪い首は切り払わねばならない
悪い野菜の悪霊どもは
不動の穴に何がいるかはわからない
噂では死んだ娘がひとり住んでいるのだという
それを確かめようとは 誰も
オシャカサマデモオモワナイ