ホローキャンディ
比良末潮里

足を洗った後の石鹸の香り漂うシャワールームで、水色のモザイクタイルが涙した。

清廉潔白なものに憧憬の念を抱いて、祈り続けるけれど、人が愚かで汚いことは百も承知。

これからも、多分同じ。

神様には、なれない。

ビー玉キャンディ、飴玉舐めた。
ただ、唾液のみが溢れてくるひもじい口腔内。

空想でお腹を満たしたい。

だから、少女は受胎告知に瞳を潤ませる。

コウノトリが運ぶのは、本当はお魚。

だけど、ベイビーを待ってる。

もう、あれから何十年かしら?

ママが腕を組んで、眉を上げる。

「早くなさいな」。

たくさんの年老いた少女たちが、マリア様になりたくて祈る。

絹糸で織られた美しい布にくるまれて、やってくる万に一つのベイビーを待ってる。

狂おしいほどのファンタジーの中、今度はおはじきを口に頬張る。
カシャカシャと音をたてて、歯に当たる。

本当はひとつも味がしない。

本当は、何も意味が無い。

ただ、かたいだけ、ずっとずっと
かたいだけ。

そして、ただただ美しいだけ。

色とりどりのホローキャンディ、
幾つも幾つも舐めて回して
一体これはいつ終わるんだろ?

空しさで、
いっぱいなのに。

色んなことが限界なのに。



自由詩 ホローキャンディ Copyright 比良末潮里 2014-04-27 00:13:33
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