ホローキャンディ
比良末潮里
足を洗った後の石鹸の香り漂うシャワールームで、水色のモザイクタイルが涙した。
清廉潔白なものに憧憬の念を抱いて、祈り続けるけれど、人が愚かで汚いことは百も承知。
これからも、多分同じ。
神様には、なれない。
ビー玉キャンディ、飴玉舐めた。
ただ、唾液のみが溢れてくるひもじい口腔内。
空想でお腹を満たしたい。
だから、少女は受胎告知に瞳を潤ませる。
コウノトリが運ぶのは、本当はお魚。
だけど、ベイビーを待ってる。
もう、あれから何十年かしら?
ママが腕を組んで、眉を上げる。
「早くなさいな」。
たくさんの年老いた少女たちが、マリア様になりたくて祈る。
絹糸で織られた美しい布にくるまれて、やってくる万に一つのベイビーを待ってる。
狂おしいほどのファンタジーの中、今度はおはじきを口に頬張る。
カシャカシャと音をたてて、歯に当たる。
本当はひとつも味がしない。
本当は、何も意味が無い。
ただ、かたいだけ、ずっとずっと
かたいだけ。
そして、ただただ美しいだけ。
色とりどりのホローキャンディ、
幾つも幾つも舐めて回して
一体これはいつ終わるんだろ?
空しさで、
いっぱいなのに。
色んなことが限界なのに。