沈没
山部 佳

貯木場で死んだ友達を思い出した
遊んでいて転落し
浮かんだ材木の下に潜り込んでしまい
溺死したのだ
指の爪がいくつか剥がれていたそうだ

重い材木と材木の隙間を
懸命に広げようとしたのだろう
小さな小学生の指では
鼻を突き出して空気を吸うほどの隙間も
得ることは叶わなかった

窓からドアから
今や、斜めの壁になった床の切れ目から
海水が浸入して
今や、斜めの天井になった壁に向かって
彼らを押し上げていく

見捨てられた船は
巨大な鋼鉄の笊となって
絡め取られた彼らを
すぐ手の先にある大気から
天井のある水底に連れ去ってしまった

彼らの爪は剥がれ
空気を求めて剥がれ
わずかな隙間に差し入れた
指は
折れた

私は友達を思い出す
浮いた材木の簾の下から
わずかな隙間から
葉桜が陽光にきらめいて
明るい夏に向かう淡い青
水面に揺らめく空を見上げながら
あちらの世界に行った友達を


自由詩 沈没 Copyright 山部 佳 2014-04-26 20:54:06
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