籠の中
比良末潮里


やさしさというのは
残酷に降ってくる
ベッタリ濡れた髪で手で
深い湖につかまれて
捥がくほどに足を取られる

いつか飛びたい羽根までもが
「お外は怖い」
と手折られた

鳥たちは
かごのなか
どうしようもない
無力さで
死んだ目をして
違う世界の空想を始めた

不愉快で安全な場所
奪われたのは
なんだったのか?
その記憶すら曖昧で

なくことも叶わない

ただ胸の辺りだけが
やけにしくしくする

夕陽が爛れる
雲が紅を落とす

楽しみは
眠ることだけ

夜は更けゆく
目を瞑るだけ


自由詩 籠の中 Copyright 比良末潮里 2014-04-25 22:51:15
notebook Home 戻る