あやまちの国
クナリ

抜けた髪を拾い集めて
飲み干せもしないグラスを舐めている

あんなに昔好きだったスツールも
今は
あんなに昔好きだった本の墓場

指先であばらをなぞる
骨がある
皮が包む

あんなに好きだった自分の体も
今は
触れてくれる人もいない感傷の残骸

部屋の隅に頭を当てる
重力のままに下へすべる
やがて
右に壁
左に壁
下に床
行き止まり
行き止まり
私が決めたから
そこで終わり

叫び方は知っている
呼び方も知っている
叫ばない方がいいと知っている
呼んではいけないと
あれだけ繰り返せば
もうとっくに知っている
違う
違う
初めから知っていた
分かっていて耐えなかった
叫びたかったから叫んだ
それだけです

行き止まりの床から頭を離す
落ちている髪の毛
さっき拾ったはずなのに
それらとは違う髪
違う髪
昔とはもう違う私
他人の思い出の中にはまだいる
でも私の中にはもういない
あれは誰で誰だった
抜け落ちたらもう他人
通り過ぎたらもう忘却

とどめは自分の手で刺そうよ

違う
違う

けりは自分でつけようよ

違う
違う

私の部屋に
私一人でいるとき
私は一番間違える

違う
違う!

そんなことを、
心から願っているはずがない!

そうかたく信じている誤謬を
それなのに
誤謬のままに
私が今日も叫んだ。



自由詩 あやまちの国 Copyright クナリ 2014-04-25 19:29:34
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