自己中
イナエ
1
おそらくどの国民でも
国の敵が現れたとき
一つにまとまろうとするであろう
為政者はそれを利用して
敵を作り国家存亡の危機をあおり
同じ方向を向けさせた歴史もある
そのとき
真っ先に駆け出すのは若い男
国を守るのは俺たちだと
己の中を去来する恐れは弱者だと
自らの目に睨まれ疾駆する
とらえた敵がたとえ虚像だと疑っても
疑いは心の揺れと己に信じ込ませて
疾走はとまることをしない
一色になった応援席を見よ
青い旗の中で 赤い旗を振れるか
燃え上がる青い火を乱す者となり得るか
2
日本では何度繰り返したことか
歴史を見れば
そっぽを向いた男がいた
諸大名が九州に集まるとき
関東に居残って
若者が国難という語に奮い立つとき
肉親愛を貫いた幾人かの詩人
民族よりも人間であることを
選んだ人の勇気と思慮
燃え上がってしまう若者よ
心中に一本の心棒を通した
真の自己中になれるか