遊び人
ユッカ

行ったこともない月の話なんか聞きたくないし、
会ったこともないモナリザに見とれたりなんかできない。
目の前に広げられた教養と呼ばれるもののすべては、
世界のネタバレだから知りたくない。


もっとたのしいことをしたい。


座るためだけにバスに乗ることや自分のためだけに料理をつくることが必要だ。浮き世はやりたくないことで溢れているのだから。せめてあたし達くらいは好きに生きよう。使いたくない敬語でうやうやしく扱われるのにこっちもいい加減ウンザリしているんだよ。「いらっしゃいませ」って笑うあの子の頭の中は今晩の夕飯でいっぱいだろうから、わざわざ目をあわせたりはしないけど、赤い唇・嘘つき・泥棒たちよ、今日もお先に失礼します。

「お仕事だから」って言うようになった、あの人もつまらない人になってしまった。借り物の言葉に埋もれているうちに、借り物みたいな笑い方をするようになった。日に日に姿勢がよくなる、あの人が警備したショーケースの中身は誰も覚えていない。皮肉なものね・今日も残業・サービス出勤お疲れさまです。

あの人たちの背筋が矯正されて、今よりもっとまっすぐになるころ、あたしは野原でまるまって眠ります。春だから気をつけなさいね、って笑う、あなたはいいな、いつまでたっても歪んだ骨で。壊れかけたようなことを言って、暴力的なジョークで天にものぼる気持ちになって、油絵よりもずっといいにおいで、ロマンチック・ポエミー・詩集なんか燃やして、もっとたのしいことをしよう。


自由詩 遊び人 Copyright ユッカ 2014-04-21 22:00:54
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