桃太郎
春日線香

迎えにきた おまえを
切っ先を腹に埋めこんでいるさむらいを
かつて桃太郎と呼ばれたおまえ
殿様の不興を買ったおまえ
梨の木の下で死を待つおまえ

おお おれは鬼の屍
といっても はじめから鬼は屍であって
屍の生が鬼であるだけ
退治られても生きているのだ
水面に映る月のように

さてもさても 行こうじゃないか
因縁を忘れて 刀を折って
こぼれた腸はまた収めればいい
生前の恨みはすべて山へ捨てよう
枯れ木に花を咲かせるだろうさ

今日からわれら鬼
ともに人の世をあざ笑い
酒食に溺れて時を過ごそう
そのうちおまえの額にも
立派な角が生えることだろう


自由詩 桃太郎 Copyright 春日線香 2014-04-18 00:14:12
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