光の歩
木立 悟
蒼い霧のなかの笑み
塩の光がつくる馬
曇を歪ませ 熱は駆け抜け
止まらない空を追いかける
足跡のような湖が
山の間につづいている
冬は地平の桃色の奥
静かに静かに脈うつ羽の根
海へと向かう金の道
海へと沈む金の道
ゆるやかにゆるやかに坂を下り
海へとたどりつく光
光は行先を照らさない
光はただ 胸元に点く
光はただ 胸元に笑む
雪に埋もれた地を描く
枝にまとわりつく赤が
重なる世界を廻してゆく
節に葉に幹にひろがり
透きとおる手に触れてゆく
道に置いてきた光
一歩二歩と振りかえり
一歩二歩と降り積もる
いつか見た景に似た色の朝
見つめる羽に涙する朝