カイト
林 淳子

冬の海 
風にのって
たこは
突き進む
よく澄んだ青空を 

たこは
海を見下ろし
静かにないだ波が冬の柔らかい光で照らされた
淡い世界をみつめる

子どもたち 大人たち 
犬たちを
たこは
さがす

森の向こう側に広がる町並み
大きな公園
岸向こうに広がる工場地帯
連なるサイロ

船が港を出て
自動車が橋を渡る
釣竿をさげた子どもが桟橋を駈けるころ

たかい たかい空から
たこは 

見たことの無い光を追いかけ
聞いたことの無い音を見つけるために
赤と黄色と緑 
長いリボンをはためかせ
地球の裏側目指して
飛び込む

傾き始めた太陽の光とともに
もうすぐこの海に現れる 金波銀波を泳ぐのさ



自由詩 カイト Copyright 林 淳子 2014-04-17 01:05:10
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