五大湖は闘えと言う
ブルース瀬戸内
誰もスペリオル湖の悲哀を知らない。
誰もミシガン湖の慈愛を評価しない。
誰もヒューロン湖の出生に言及せず
誰もエリー湖の瑞々しさに気づかず
誰もオンタリオ湖の覚悟を知らない。
知らないで済むことはとても多くて
知らないフリで済むことも存外多い。
誰だって賢くなればそうなるのさと
野生をむき出しにした論駁も空しい。
湖は静かで平穏な水面を武器にして
それでもなお闘おうというのである。
武器が脆いとか精神論の極致だとか
そんなことではないのかもしれない。
スタンスだ。問題はスタンスなのだ。
牙を向け。現実の現在のそのものと
いよいよ闘う時がきた。準備万端だ。
湖面を水鳥が軽やかに舞った。今だ。