点眼
Lucy
地上に引き出された私の網膜に
無数の矢が
容赦なく突き刺さる
モグラになって初めて知った
過剰な光は
漆黒の闇よりもさらに凶暴で
瞳を凝らす事を禁じ
見る事を私に許さない
視神経を射る痛みを
誰と共有できようか
明るいとか暗いとか
見え過ぎるとか
見えにくいとか
感覚器官の反応という
個人的事情でしかないことを
まして哀しいですとか
痛いとか
辛さなんてもちろんのこと
寒いとか暖かいとか
狭い広い
煩い静か
軽い重い
優しい厳しい
すべて誰とも分かち合えない
私一人の主観なのだということに
気づく
モグラの私に居場所はない
頑なに眼を瞑り
この淋しさを
文字変換しイメージに織りあげて
見知らぬ誰かとの
通りすがりの誰かとの
運命の出会いの誰かとの
共有を試みる
共感を夢見る
共存を希う
薄暗いはずの待合室に
光は溢れ
私の名が呼ばれる
「眼底検査をしますので
診察室にお入りください」