七夕
殿岡秀秋

竹の葉に星が宿る
母が切った色紙の短冊を前に
幼いぼくの指や手や
腕から背中へ
ありったけの力が
みなぎっていく

卓袱台に
前かがみになって
鉛筆を握って
母に教わりながら
字の形を作る

願い事は何なの
と聞かれても
星の光を見上げるだけ

一枚の短冊が
黄色い星の隣に
黒い蛇となって
命を灯した

翌日には
天帝の母が
竹をおり
兄弟たちの願いを
引きちぎる

せめて星だけでも
残しておけばいいのに
とおもいながら見ていた

半世紀を経て
竹の星が
ぼくのこころに蘇る
風にゆれる短冊に
もじをかきたい
と書いた願いは
かなったのかもしれない


自由詩 七夕 Copyright 殿岡秀秋 2014-04-15 04:12:41
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