旅の写真
山部 佳

知らぬ間に妻が撮ってあった
私の写真が私を驚かす

知らぬ間に白髪頭の
頼りなげな初老の男が
否応なくしょぼくれた様子で
サンジェルマン大通の店のウインドウ越しに
チョコレイトやらマカロンやらを眺めている
哀しみを通り越してすでに
漫才の領域に達している
つまり
私は漫才を観て笑うのではなく
泣いているのだ
そのことに気づかせてくれる写真

そのまま
あるがまま
いつか霧が晴れたら
Bの鉛筆を使って
自画像を描いてみたい
しょぼくれ尽くすのである
やがて太陽が赤色巨星になり
超放射性のガスを放出して
白色矮星になるのと同じように
しょぼくれ尽くして収縮するのである

高密度に凝縮した私は
その身を包む靄に光を与えて
再び輝けるかもしれない…
レンブラントはそれを
知っていたのかもしれない


自由詩 旅の写真 Copyright 山部 佳 2014-04-11 21:49:02
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