【 春の鬼 】
泡沫恋歌

ジャンケン ポン
鬼だー! 隠れろ!
春の鬼ごっこ
小さな女の子たちが隠れる場所を探している
木の陰へ
路地の奥へ
鬼が来る早く隠れないと……

慌てて
建築資材倉庫へ
独りで逃げ込んでいった少女に
意外な場所に鬼が潜んでいた

いたい! いたい!
小さな蕾に挿しこまれた
異物に悲鳴を上げる
怖くて抵抗できない

何をされたのか
分からないまま
少女は鬼から解放された

もう誰もいない
鬼ごっこは終わっていたから
泣きじゃくりながら少女は帰っていく

すべて運命のせいにして
黙り込むより仕方なかった

汚された身体を
一生愛せない少女
心の傷は深い
春になると
耳の奥に残った
鬼の喘ぎ声が聴こえてくる

ホントは春なんか大嫌い
だって 鬼が隠れているんだもの――



                               2014/04/09


自由詩 【 春の鬼 】 Copyright 泡沫恋歌 2014-04-09 07:19:26
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