それぞれの果て
黒ヱ

愛を またどこか遠くで呟く人がいる
たった一人ぼっちで

空が黒む 色は無き様に吸い込まれていく
細れに浮かぶ 光の点々が 見下ろす木々を照らしはしないように
影の増すは やがて見境もない闇を落とす
悲しみのまま

駆け出して
別れの指先から 語られることに震え
さ揺らぎに乗り 突き放してしまう

川の道より 互いに離れ
淡色となり 消えた

左手を眺め その輝きのなさに
「こんな季節なのに 凍えてしまいそうさ」
約束結ぶ指の 切なさよ

流れ行き着く 結ばれなかった星々が
落ちては また 落ちていき 
次こその 固い糸を紡ぐ 
そう 絶える事はなく ずっと
切り取っては離す それでも亡くせない
この思いの中の絶景を 疎ましくはせずに 
ここから もう一度 飛び立つ


知る思い出より 知らぬ今の方が焦心で
それでも置き去りに 空は託す
不意に見つけては 切なく巡る 違う人を
綺麗な笑顔 変わらず

空の道を経て 止まり木眺めて
ひとりの羽に冷たさ思う

色を叫んだ口から零れる
「あの時もう少しだけ 素直になれてたなら ねぇ」
後悔の音 響いて行くばかり

髪の長さに 月日の重きを感じ
守っていたもの 廃れていくものの寂しさ
寄り木の枯れたまま 背を伸ばしていく 轍の隙間から
始まることもない 優雅な空 思いの馳せて
見つめては摘む 緑の芽 飛び交う 
消えていく 
とても大切な そう 大切なもの


高く 飛んでいくものだから
またひとりでに 見えなくなろうとしている

そして終に行き着く それはいとも簡単に
お互いがお互いに言う
「羽の亡き者よ」

自らに 然は然りながら 投げる
煌き落ちる その星の軌跡を指でなぞって
羽ばたいてくれる者無き 空に眼差し向けて 千切る

風だけは 同じ様にあり 語りかける

また雛となり 立ち尽くしている
「それでも 高く 飛んで行ってしまうものよ」


夜天を飛ぶこと
見てもらう それすらも出来ないまま
それでも振り返らず 駆け抜けていく
寂しげに

小さく 再会を思い描く
本当はお互いに求め合い
それでも 加速し流転し 離れて行く

繋いでいた指は 今 違うものを求める
比例に戸惑い
零し 東風(あゆ)に吹かれ
ただ 新たに咲いた幼い芽を抱いている

「叫んでいる」

果てしなき あなたとの距離
鳥の羽ばたき返し そんな間だったのに
今では根と葉のようさ

手を振り 泣きながらでもいい
いつか想いの届いた 飛翔の来るを
いつまでも 信じて

いつまでもいつまでも 待っている


自由詩 それぞれの果て Copyright 黒ヱ 2014-04-08 21:43:41
notebook Home