【嵐】 根を張る
るるりら

石灰岩の岬で その木は咲いていた
岩礁を咀嚼する波しぶきで、真夏だというのに咲いていた 桜の木
あの花は  きっと永久の入り口を見たのだ

桜は黄泉を観ていた
泣いている人々のことは おかまいなしに
人の泪など どこにも届かなくて良いことだ
だれかに届けたい 悲しみなんてない そんなもの
波に揉まれて喰われてしまえばいい

なにかを捨てようとしているとき
その本質は もうそこには すでにない
蛹がいきなり 蝶にはならないように
蝶が蛹を捨てるとき もう蛹の中に蝶はいない

きみのいなくなった部屋の窓をあけると
桜散らしの雨がふっていて
潮が降っているのか 
泪なのかわからなくなる雨が わたしを岩礁にしてしまう 
岩礁の私は ほそいほそい白い根を張り しがみつく

もっと根を張れ 花を散らす嵐が吹くぞ


 
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novelistの「詩人サークル 群青」の四月課題【嵐】
内容を 改編させていただきました。

http://book.geocities.jp/sosakukobo_gunjyo1/


自由詩 【嵐】 根を張る Copyright るるりら 2014-04-07 15:05:08
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