花冷え
山部 佳

灰色の雲流れる

つむじ風にのって
花びらは舞い上がる
突然の驟雨に逃げ込んだ
小さな人々は花雲の下に

言霊は枝にとまり
とりどりの姿で色を流す
寂寥は懐かしさをまとい
風に身を捩る桜木を見る

散ってしまえとばかりに
冷たい風は歓喜の雄叫びをあげ
私の暗い喜びも密かな回転音を高める
早々に散ってしまえばいい

すべてを許した
もう何も拘泥るものはない

黒い鳥は風を読んで
灰色の空に滑り込む
プロペラの音が聞こえる
西の地平の雲の切れ間から

春が連れてきた死霊は佇む
語られない物語は横たわり
薄紅の絨毯の下に埋もれて
書物は永遠に閉じられる


自由詩 花冷え Copyright 山部 佳 2014-04-06 21:06:32
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