分電盤
葉leaf
人々が果実のように生っている
呼ぶ声が開く匂いの輝きに
寄り添うように開きだす応える声
こんなにも血が発酵した生き者同士
互いの表皮には場違いな分電盤が
静かに接続されている
収穫を司る死霊からの伝言に
手早く分電盤を操作し
果肉の味をそろえるために養分を分配する
消毒を司る菩薩からの慈悲を受け取るため
分電盤の配置を幾つか試し
最も効果のある角度を菩薩へ返答する
こんなにも腐った血流だから
電流を切り替え切り替え
他者の訪問には電力を張り巡らす
果実の発生も生育も熟成も
互いの腐った血流を混ぜて作った電流によって
その電流の複雑な道行きによって
その道行きの頻繁で高速な切り替えによって
他者の持つ澄んだ血流に辛うじて同期するのである
今日も人々はデスクの前で電流を切り替えている
自分たちの血がますます混ざりあい芳醇に発酵していくように
そしていつかは醸造された自分たちが大きなうたびとに賞味されるように