不立文字
ichirou

座禅

靴下を裏返すように
自分の端をつまみ
引っ張ってひっくり返すと
私は
闇に包まれ
遮音され
触覚も
痛覚も
温点と冷点もなく
声を出すことも
食べることも
匂いを嗅ぐことも
できなくなった

すべての感覚器官が内に閉ざされ
非我を知る術を
非我に伝える術を
失った

残るはこの意識

でもやはり
生きる愛おしさが残り
無に帰して無我に
なれず

あの時
あの空
あの人

何かを想い
感じていた






自由詩 不立文字 Copyright ichirou 2014-04-05 06:09:44
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