Blood Blood Blood
ホロウ・シカエルボク
お前の脳天に沈み込んだ金槌の先端はゲラゲラ
真っ黒な鉄なのに真っ赤になって恥しがってゲラゲラ
色白な可愛い娘だったのにグチャグチャになってゲラゲラ
あれは年表に載せるほどのこともないある日のことでございました
マリはその日も鞠をつきながら家路への道を急いでいたのです
マリというのは本当の名前ではなくいつも鞠をついていたせいであるのですが
いつもどこでも誰からもマリと呼ばれるものだから親ですら本当の名を忘れてしまい
なんとなく俗世間的にもうマリでいいかという雰囲気になっていたのです
世情というのはいたってそういうものです
マリは鞠をつきながら家路への道を急いでいたのですが
同じく仕事を終えて事務所への道を急いでいたオート三輪にこれでもかとばかりにぶちかまされてマリでも何でもなくなってしまいました
しいて言うなら肉でした
しいて言う必要もないことですが
お葬式のときに本名を思い出せなくて親が悩んでいると棺の中で肉が起き上がって「ミチヨだってば」なんて言ったとか言ってないとかいうお話もありますがそんなお話は今回の話とは余り関係がないことで
関係がないといやこの話自体
関係があるのかないのかよく判りはしないのですが
氷屋がギャギーンと店先で馬鹿でかい氷をカットしておりましたらば
お調子もののまさる君が切られる振りをしてドッカンドッカン笑わせようと目論んだ挙句タイミングを誤って本当に切られてしまい
どうにも笑いごっちゃない事態に陥ってしまいました
まさる君の幼馴染でお隣に住んでいたアミちゃんだけはおしっこを漏らしながらおかしな笑いを浮かべていたそうですが
頭を抱えたのは氷屋さんのおじさんです
警察やら病院やらに電話をかけながら
真面目一徹で何十年もこれでいいんだと言い聞かせてただひたすらに氷ばかりを切り続けてきたのに
まさかそんなことが子供を一人殺してしまう羽目になるなんて
子供たちやそこらをうろついていたご近所の奥様連中がここぞとばかりに証言をしてくれたお陰で罪に問われることはありませんでしたが
おじさんはもう氷を切ることが出来なくなってお店をたたんでしまいました
長い間有難う御座いましたと書かれた貼紙を下ろしたシャッターに貼り付けたとき
こんなことはもうこおりごおりだと呟いたとかなんとか
ああそうそう
アミちゃんは治らない阿呆になってしまって出られない病院に行ったそうです
バスルームでゲラゲラ
コンパクトにおまえをゲラゲラ
お前は華奢で可愛かったけれど
流石にこんな時でも都合のいいサイズとはいかなかったな
工事現場で遊んでいたゆきひろ君はコンクリートミキサーに巻き込まれて壁になりました
棺の中にはコンクリートの塊を入れざるを得なかったので
彼のご両親は棺を担いでくれる力自慢を何人も雇わなければならず
息子の死と余計な出費で首が回らなくなり
ある朝梁に縄をかけて死んでいたそうです
そこにたまたまゆきひろ君に貸しっぱなしになっていたお人形さんを返してもらいにきたユリちゃんが
二人の姿を見てひっとなってしまい
少しの間気を失っていましたが
目を覚ましてからはそれはもう興味津々で
お父さんの着物を解いて死後硬直で大きくなった陰茎をつぶさに観察したり
お母さんが漏らしたものの臭いをイヌのように嗅いだりして楽しみました
死ぬとはどういうことだろう
ユリちゃんはそれが知りたくて仕方がありませんでしたが
それよりもゆきひろ君に貸した人形のことが気になって仕方なく
一時間ほどあたりを探してようやく見つけて持ち帰りました
後に彼らの死体が発見されたとき
部屋に荒らされたあとがあったことから
すわ殺人事件かと騒然となりましたが
すぐに「自殺で間違いない」との結論に至りました
ちなみに力自慢たちはきちんとお給金を貰っていたそうです
ユリちゃんは大きくなってから病院の地下で死体をホルマリンに漬ける仕事に就き
僅か十年で一等地に豪邸を建てたそうです
が
地下にはなんだか怪しい臭いがする部屋があったとかなかったとか
ホラ、ホラ
お前はまるで分解されたお人形さんのようだ
発泡のケースに小分けにされて入れられて
これから土の中に埋められるんだよ
ゲラゲラ
ナツミは近所で有名な美少女でしたが
変質者にさらわれて乱暴された挙句殺されそうになり
何でこんな目にあわなくちゃならないのと嘆いているうちにムカムカしてやってしまいました
当然正当防衛でした
「後悔はしていない」と晴れやかによく語っていました
対価が必要なのです
受けた傷にはそれに見合うだけの対価が
ナツミは一時期精神病院に通っていましたが
数年後には完治して就職しました
大手銀行の行員だそうです
とてもよい仕事をすると皆に気に入られているという話でした
ああ
働いたあとのビールは美味いなぁ
なにが言いたいのかって?
マリ、まさる、アミ、ゆきひろ、ユリ、ナツミ
みんな
おれの
血族さ