花祭り
ichirou


僕の通っていたひかり幼稚園は
お寺の中にあって
墓地は恰好の遊び場だった

4月8日は花祭り
お坊さんの園長先生は
あまりおいしくない甘茶をみんなに飲ませて
毎年自己紹介させる
めんどくさかったので
僕は園舎を抜け出してお墓で遊んでいたら
ユキ先生が僕を捜しに来た

先生に見つかった僕は
逃げた
幼稚園を飛び出て
畑の中を走って逃げた
先生は優しい声で僕の名前を呼ぶ

いちろーくーん

僕はうれしくなって
どんどん逃げた

そして

僕は落ちた

僕は深い肥溜めに落ち
溺れた
それからすぐに
僕は何かにしがみついた
僕がしがみついた何かも
僕にしがみついてきた
僕はユキ先生にしがみついていた

ユキ先生は深い肥溜めに飛び込み
肥溜めに腰まで浸かって
僕を助けてくれた

園庭の水道で僕を洗いながら
先生は
馬鹿ね 馬鹿ね と言いながら
泣いていた

園長先生は
真っ裸の臭くなった僕に
温かい甘茶をヤカンでかけながら
クッサイお釈迦様だと言って
大笑いしていた










自由詩 花祭り Copyright ichirou 2014-04-01 22:33:10
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