【 廃屋の桜 】
泡沫恋歌
廃屋に一本の桜が立っている
誰一人愛でる人もなく
人知れず枝を伸ばし
花を咲かす
月明かりの夜
街灯に照らし出されて
ぼんやりと薄桃色の
その姿を浮かび上らせていた
夜の静寂に息づくように
一枚一枚
花びらを夜風に散らしていく
闇に舞う胡蝶たち
静謐な佇まいに
春の息吹に触れたような
誰も廃屋の桜を見ていない
それでも春を演じている
人間とは違う次元を
あの桜は生きているのだろう
2014/04/01
自由詩
【 廃屋の桜 】
Copyright
泡沫恋歌
2014-04-01 11:52:37
縦