重力を連れて散歩に出る

重力を連れて散歩に出る
途中で箱に捨てられた電卓を見た
すでに衰弱して鳴く気力もない
可哀想だったが液晶は嫌いだ
電圧に媚びを売る様が正視できず
家に連れて帰ることができないのだ
ポケットの中で虹の感触を確かめ
アフリカの飢えた子どもと同じように
コマーシャルの隙間に押しこめて
ぼくは電卓が視界に入らないようにした
もうすぐ目障りな青空のあちらこちらに
ゴム動力の飛行機たちが飛び交う時刻
ぼくは見えなくなった何かに向かい
懸命に吠える重力を引っ張り帰宅した
こんな残酷さはどこにでもあるはずだ
このテキストを読むあなたの瞼の裏にも


自由詩 重力を連れて散歩に出る Copyright  2014-04-01 07:23:07
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