ぼくは幸せである
殿岡秀秋


合気道の稽古で
左目を傷つけた
痛風の発作が
右の親指の付け根に出た
車庫入れのときに
自動車を壁でこすってしまった
黒皮の財布を失くした

それでもぼくは
幸せであると唱える

子どものころは
母に教わった
南無妙法蓮華経という題目を
困ったときに唱えた

信心をしない今
ぼくは幸せである
と唱えるのは
呪文の代わりだろうか

たくさんの不幸が
出番を待つ舞台裏を
のぞかないで
ぼくは幸せであると唱える

不幸な気分が黒子のように
退場する
赤い衣装をまとって
幸せな気分がせり上がってくる








自由詩 ぼくは幸せである Copyright 殿岡秀秋 2014-04-01 03:45:48
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